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title: "父島に全部賭けろ"
description: "東京から船で片道 24 時間かかり、船は週 1 便しかない父島に、2022 年と 2025 年の 2 回行きました。不便さのおかげで生まれる「何もしない時間」が、他の観光地では得られない体験だった理由と、旅にかかった費用を紹介します。"
date: 2026-02-08
tags:
  - "ポエム"
  - "旅行"
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2025 年 8 月、2 回目の父島旅行に行ってきました。
父島は小笠原諸島の中心となる島で、東京から南へ約 1,000 キロメートル離れています。2022 年に初めて訪れたあと、もう一度行きたいと思い、今回 2 回目の訪問となりました。

この記事では、2 回行った今でも「父島に全部賭けろ」と言い切れる理由をつらつら書いていきます。

## 片道 24 時間の船旅

父島は東京都小笠原村にあります。テレビの天気予報で、日本地図の右側に小さく表示されているのを見たことがある人も多いはずです。
父島には船でしか行けません。しかも片道約 24 時間の船旅です。

友人に話すと、毎回「は！？　嘘でしょ！？　飛行機ないの！？」と驚かれます。国内旅行の移動に 24 時間かけるのは、どう考えても非効率に思えますよね。
しかも船は週 1 便しかありません。2025 年 9 月時点では、土曜日に東京の竹芝桟橋を出発して、帰ってくるのは翌週の木曜日でした。旅程はほぼ 1 週間になります。
1 便に乗れるのは約 900 名で、この人数が島に滞在する観光客の上限になります。

東京湾を出て太平洋に入ると、スマートフォンの電波は圏外になります。やることがないので、船内を散策したり、デッキで海を眺めたりして過ごします。普段なら「時間の無駄」と思ってしまう過ごし方が、船の上では不思議と心地よく感じられます。
なお、2025 年 9 月時点では、有料の Starlink の Wi-Fi が船内に導入されています。私はこの旅では使いませんでした。

## 浜辺で何もせずに過ごした時間

到着してからの数日、私はけっこうアクティブに過ごしました。昼は体験ダイビングをして、山に入って戦跡を巡るツアーにも参加し、夜は満天の星空を見るスターツアーに行きました。最終日は、初寝浦海岸まで山道を下るプチ登山もしました。バカ疲れたし全身汗でビチャビチャになったけど、どれも楽しかったです。

せっかく 24 時間かけて来たのだから、全部やりたい。旅行者としては自然な気持ちだと思います。
それでも、全部やった中で一番記憶に残っているのは、大村海岸で過ごした夕方でした。

大村海岸は、夕方になると山の陰に日が入って一気に涼しくなります。浜辺には防波堤の役割をしていると思われる岩が積まれていて、私はその岩の上で休憩していました。そこで聞こえてくるのは、波のさざめきだけです。
観光地によくある子どもの遊ぶ声も、グループ旅行の賑やかな笑い声も、カップルの会話も聞こえません。

5 分ほど波の音を聞いていると、それまで考えていたことがどうでもよくなる瞬間がありました。
仕事のことや明日の予定が頭から消えていったとき、「これがいわゆる瞑想状態なのか」と思いました。

この状態を禅や瞑想という言葉で呼ぶのが正しいのかは分かりません。それでも、精神が統一されたような感覚がありました。同時に、私が今まで「自然の音」だと思っていたものは、実は「自然の音」に「人工の音」が加わったものだったと初めて気付きました。

![大村海岸の夕方の浜辺](/_emdash/api/media/file/01M33BE90RQ401R499HRGSM7R0.png)

2 回目の旅でも、同じような場所を見つけました。境浦海岸から少し南に行くと、岸壁の影になって日中も日陰になる場所があります。そこにあぐらをかいて座ると、波の音と鳥の鳴き声だけが聞こえてきます。最高と言うほかありません。1 回目に大村海岸で味わったのと同じ感覚が、ここでも起きました。

## 父島の不便さが作る何もしない時間

私は「何もしない時間が大事」だと頭では分かっていても、普段の生活では実践できません。

常にネットにつながっていて、やろうと思えば何でもできてしまいます。沖縄のリゾートに行っても、スマートフォンはつながるし、ホテルには Wi-Fi があります。せっかくの休みだからと観光スポットを全部回り、有名な店に行って写真を撮っていると、気がつけば日常よりもスケジュールがびっしり詰まっています。癒やされに行ったはずなのに、帰ってきたらどっと疲れている。そんな経験は誰にでもあると思います。

父島では、そうした詰め込みが物理的にできません。

24 時間の船旅は、「移動は早いほうがよい」という前提をひっくり返します。船が週 1 便なので、島に滞在する日数は決まっていて、「もっと効率的に回ろう」と考える余地がありません。島にいる観光客は 1 便の乗船者数が上限なので、ビーチにはほとんど人がいません。市街地ではスマートフォンがつながりますが、少し山に入ると圏外になる場所もあります。

こうした制約が、考えていたことを手放せる環境を強制的に作ってくれます。
自分の意志で「何もしない」ことを選ぶのは難しいです。しかし父島では、できることが限られているので、自然と何もしない時間が生まれます。

もし空港ができて 3 時間で行けるようになったら、この不便さはなくなり、父島も他の観光地と同じになってしまうと思います。だから個人的には、今のままでいてほしいです。

## 帰ってきてからの変化

父島に行く前の私は、何もしないことにソワソワしていました。電車は最短ルートで乗り換え、移動中は YouTube をバックグラウンドで再生していました。カフェでも必ず何かの作業をしていました。

1 回目の旅から帰った直後、私は自分が変わったと思いました。駅のホームで電車を待つとき、以前なら「早く来ないかな」とスマートフォンをいじっていたのに、ただ立って待てるようになったからです。

とはいいつつ 2 回目の旅から半年経った今、スマートフォンは普通に見ています。変わらなかった部分のほうが多いかもしれません。現実はそんなに甘くないですね。

ただ、あの浜辺での 5 分間の感覚は、たしかに残っています。目をつぶれば、波の音と涼しくなった空気、考えていたことがどうでもよくなったあの感覚が今でも蘇ります。
あの感覚は父島で初めて味わったものだったので、2 回目も行きましたし、なんなら 3 回目はいつ行こうかと考えているくらいです。

## おがさわら丸の汽笛と島民の見送り

おがさわら丸が竹芝桟橋を出発するときに鳴らす汽笛[^汽笛]を聞くと、これから始まる旅への期待が高まります。24 時間後、父島に到着したときの汽笛は、まるで「最高の夏へようこそ」と迎えてくれているかのようです。

そして 1 週間後、帰りの船が出港するときには、たくさんの島民の方々が港まで盛大に見送りに来てくれます。聞こえてくるのは「さようなら」ではなく「いってらっしゃい」という言葉です。また帰ってこられる場所があるという安心感と、島を離れる寂しさが入り交じって、なんとも言えない気持ちになります。

[https://www.youtube.com/watch?v=gYaN2RgviYw](https://www.youtube.com/watch?v=gYaN2RgviYw)

## おわりに

父島に全部賭けろ。

24 時間の船旅は面倒だし、1 週間の休暇を取るのは大変です。費用も 24 万円ほどかかります。スマートフォンを手放せるかも分かりませんし、帰ってきたら結局また元の生活に戻るかもしれません。

それでも、あの 5 分間のために賭ける価値はあると私は思います。
ぜひ騙されたと思って、一度行ってみてください。そして父島で会いましょう🏝️

## 旅の費用

- 合計: 約 24 万円
  - 船代と宿代: 約 15 万円(特二等寝台、少しよいホテルに宿泊)
  - アクティビティ代: 約 4 万円(スターツアー、戦跡ツアー(1 日)、体験ダイビング(1 日))
  - 食費: 約 3 万円(お茶やお菓子などの細かい買い物も含む)
  - その他: 約 2 万円(大まかに計算しているので、ここは誤差があります)

## おまけ

島で撮影した写真を掲載します。

![沈没船が見える境浦海岸の風景](/_emdash/api/media/file/01M33BE90D59P1FYP1T8WG0C5M.png)

有名な沈没船がある境浦海岸です。沈没船のところまで実際に泳いでいくこともできます。

![境浦海岸南側の岸壁の影になる場所](/_emdash/api/media/file/01M33BE913SKJ77T0BK21Q5X7C.png)

2025 年に「答えを得た場所」です。境浦海岸から少し南に行くと、岸壁の影になって日中も日陰になる場所があります。

![岸壁の日陰で波の音を聞ける瞑想スポット](/_emdash/api/media/file/01M33BE90QP42566GE1MESRNAF.png)

この日陰であぐらをかけば、波の音と鳥の鳴き声を聞きながら瞑想の境地に到達(?)できます。

![初寝浦展望台から見下ろした初寝浦海岸](/_emdash/api/media/file/01M33BE9118FVS1RFQ5HVQ22A1.png)

島の東側にある初寝浦展望台です。
下に見えるのは初寝浦海岸という、たどり着くのが少し難しい海岸です。

![山を下った先にある初寝浦海岸](/_emdash/api/media/file/01M33BE95Q10MANYRSV9YJQNBQ.png)

先ほどの初寝浦海岸です。海岸へ下りる遊歩道は、市街地から 5 キロメートルほど離れた山の上から始まります。
訪れる人はほとんどいない(はず)ですが、私は遊歩道の起点まで電動自転車で行き、高低差 200 メートルくらいの山道を下るプチ登山をしました。
当たり前のようにバカ疲れたし、全身ビチャビチャになりました。

![大村海岸の夕暮れの風景](/_emdash/api/media/file/01M33BE91W1D3R1MRBGKPF9H30.png)

2022 年に「答えを得た」大村海岸の夕暮れ時です。
写真では絶対に伝わりませんが、波のさざめきしか聞こえず、とても癒やされる場所です。

![旭平展望台からの眺望](/_emdash/api/media/file/01M33BE93CFFN72BMDQ6R9G8C9.png)

島の東側にある旭平展望台です。原付きに乗っていた一人旅のお姉さんに、チャリでここまで来たことを若干引かれました(自分が逆の立場でも、多分引くと思います)。

記事のタイトルは [CLINEに全部賭けろ](https://zenn.dev/mizchi/articles/all-in-on-cline) から借りています。

[^汽笛]: 船は汽笛を鳴らして、自分がどの方向に進もうとしているのか、あるいは停止しようとしているのかを周囲の船に知らせます。
